コラム

リバノスが大事にしていること

リバノス(Libanos)とは、Liberty(自由)とChronos(時間)を重ねた造語です。
ここで言う「自由」と「時間」は、「好き勝手」という意味ではありません。
急がされすぎず、自分の時間やペースを守りながら生きていける状態のことです。
利用者さんも職員も、消耗しながら回すのではなく、余裕を残しながら続けられる形を目指しています。

世の中は市場(お金の流れ)で動いている面があり、福祉サービスは制度(報酬体系)で支えられている面があります。
さらに今はSNSなどの情報環境が、人の不安や判断にも強く影響する時代です。
私たちはこの現実の中で、少なくとも自分たちの関わる範囲では「別の軸」をちゃんと持って運用したいと思っています。

私たちが問題だと考えているのは、「社会への貢献」と「個人が得る富」が一致しないこと自体ではありません。
外部性(価値が価格に乗りにくいこと)や情報の非対称(売る側が詳しく、選ぶ側が分かりにくいこと)があるせいで、弱い立場の人ほど不利益を受けやすい形で、ズレが生まれやすいことです。

市場価格は、需要と供給(どれだけ欲しい人がいるか/どれだけ提供できるか)のバランス、交渉力(立場の強さ)や制度などの影響も受けて決まります。
そういう仕組みだと、成果が見えにくく長期で地味な、社会の土台になる仕事ほど評価されにくいことがある。
ケア、教育、現場の支え、研究。こうした積み上げがあるから社会が回っているのに、そこが軽く扱われる空気が生まれることに、違和感があります。

福祉の現場は特に、「継続できる仕組み」と「尊厳」を同時に守れないと、結局いちばん弱い人がしわ寄せを受けます。
だから私たちは、綺麗事ではなく運用としてこの両立に取り組みます。
そのためには、理念だけでなく、日々のルールや仕組みの設計が大事だと考えています。

もうひとつ、情報環境の問題も大きいと思っています。
学問や科学は万能ではありません。
再現性の課題、出版バイアス、利益相反など、現実の問題もあります。
それでも「断言」ではなく「検証」に寄って、根拠を出し、修正しながら精度を上げていく仕組みです。

ところがSNSの世界では、「分かりやすい断言」や「不安を煽る話」が広まりやすく、収益化されやすい局面がある。
ここに、弱みにつけ込むビジネスや誇張が入りやすくなる。
私たちはこの構造を良いとは思っていません。
だからリバノスでも、説明はできるだけ根拠と手順を明確にします。

特に問題になるのは、孤立・不安・病気・知識不足など、人の弱い部分に付け込む形で「選択」が歪められることです。
有効な方法や選択肢があるのに、情報の非対称や不安を利用されると、本来より悪い選択をしてしまうことが起きる。
健康や生活に関わる領域では、必要な支援や相談に早くつながっていれば結果が違ったかもしれない、ということも起こり得ます。
だからリバノスは、困ったときほど「一人で抱え込ませない」「必要なら専門家や公的機関につなぐ」という方針を取ります。

ただ、私たちは世界全体を一気に変えようとは思っていません。
大きな制度は簡単には変わらないし、責任を全部背負うこともできない。
だからこそ「自分たちの半径」を変える。
少なくともリバノスの利用者さんや職員、また私たちの会社の関係者の間では、別の軸をちゃんと運用したいと思っています。

実際、世界にはインフラや制度が完璧ではなくても、人のつながりやコミュニティが強くて、幸福感が高い社会もあります。
お金や効率だけが唯一の軸ではなく、人は支え合いながら生きていける。
リバノスも、少なくとも自分たちの半径では、そういう別の軸を大事にしたいと思っています。

リバノスが大事にしていることは、「長時間働くこと」を唯一の正解にしないことです。
就労継続支援は、一般の会社に雇用されることが困難な人に対して、就労の機会を提供し、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、知識・能力の向上に必要な支援を行うサービスです。
その上でリバノスは、「労働時間を増やすこと」だけを目的にするのではなく、生活と体調に合った形で通い方や作業量を調整しながら、無理なく継続できる状態をつくり、結果としてできることと選択肢(役割や働き方)を少しずつ増やしていくことを重視しています。
作業時間や役割が増える人もいれば、まずは短時間でも安定して続けることが目標の人もいます。
どちらが上、という話ではありません。
本人の意思とコンディションに合わせて、通い方・作業量・内容・支援の濃さを調整していきます。

また工賃の水準や、事業所の運営の仕組みについて、ご質問やご意見をいただくことがあります。
工賃が月数万円という現実がある以上、疑問が出るのは当然だと思います。
就労継続支援B型は制度の報酬で運営されますが、その多くは支援提供に必要な人件費や設備、記録・連携などの運営コストに充てられます。
だからこそ私たちは、説明責任を大事にし、誤解が生まれにくい形で情報を整理して共有していきます。
そしてリバノスとしては、工賃を上げることと、生活の時間を過度に奪わないことを両立させたいと考えています。
長時間の利用を正解にせず、必要な収入と、余裕のある時間の両方を少しでも増やせるように、運用と仕組みを磨いていきます。

私たちが大事にする軸はシンプルです。

・利益や制度は、継続のために大事。でも目的ではない
・人の尊厳は最優先。できる/できないで人の価値を決めない
・困っている人を責めない。助け合って回す
・ミスは人格攻撃に使わず、再発防止に変える
・根拠のない断言や不安を煽るやり方で人を動かさない

そして、もう一つはっきり線を引きます。
要求を通すために、威圧、脅迫、執拗な迷惑行為などで、事業所や職員を揺さぶるやり方は受け入れません。
これは「相談や訴えを封じる」という意味ではありません。
苦しいこと、困っていること、正当な権利主張や相談は歓迎します。
私たちは向き合います。

私たちには利用者さんと職員の安全を守りながら、安定した支援を継続する責任があります。
必要な支援は提供しつつ、安全確保のために状況に応じて、複数名対応・記録の徹底・関係機関同席・面談方法の工夫など、必要な安全措置を取ります。

綺麗事を言うだけでは、空気は変わりません。
なので、リバノスでは「習慣とルール」として実装します。たとえば、

・困りごとを早めに言えるように、相談の窓口と手順を明確にする
・ミスやトラブルは個人攻撃にしないために、振り返りのフォーマットを統一する
・説明責任が必要なもの(契約・工賃・ルール)は口頭だけにせず、文書で共有する
・難しい案件や強い案件は必ず複数名で対応し、記録して引き継ぐ(属人化させない)

これは職員を守るためだけではなく、利用者さんにとっても「説明が透明で、誤解が減り、トラブルがこじれにくく、相談しやすい」状態につながると考えています。
完璧ではなくても、感情に振り回されず、事実と安全を基準に対応します。
必要に応じて、医療や行政など適切な関係機関とも連携します。
これは見捨てるためではなく、その人にとって必要な支援の方向を一緒に整える、という意味です。
リバノスは、これからもその姿勢で運営していきます。